2019年4月27日から28日にかけて、爺ヶ岳に登ってきました。
このブログは山岳写真ブログですが、おそらく今後もずっと忘れないであろう大変な経験をしたため、その話を先に紹介させていただきます。
27日の大谷原から赤岩尾根の登り始めは曇りだったものの、次第に雪、吹雪へと変わり、稜線上ではブリザードのような立っていられないほどの激しい風に見舞われました。
エベレスト登頂経験があるベテランの方も含め4名の方々が北アルプスで低体温症で命を落とされたようです。
冬山初心者の私は、途中何度も滑落したり、雪を踏み抜いて抜け出せなかったり、新雪の急斜面を登れなかったりで時間がかかり、途中で何度も心が折れそうになっていました。
やっとの思いで稜線にたどり着いた瞬間、突風にさらされ、またまた雪を踏み抜いて左足が太ももまで埋まり動けない状態に。
足が完全に開放されるまでの間も、進行方向が分からないとか、それならビバークするしかないとかとか、まあ色々とありまして、身動きできないまま長い時間が過ぎました。
それまではずっと登りばかりだったので汗っかきな私はヤッケの下に長袖シャツ1枚のみ。急激に体温が奪われました。
どうやら低体温症になったようで、体ごと飛ばされそうになりながらやっとの思いで辿り着いた山小屋では全身の震えが止まりませんでした。
当初は山小屋前のテン場でテント泊の予定でしたが、激しい風のために断念し、山小屋泊としました。
この日は赤岩尾根を登るパーティーが私たち含め3組いましたが、やはりみなさん山小屋泊でした。
また、後から知ったことですが、爺ヶ岳経由で冷池山荘を目指していたパーティーは全てビバークするか下山したとのことでした。
山小屋に泊まることにしたものの、全身がガタガタしてなかなか靴が脱げないし、宿泊帳に字が書けないし、声も満足に出せないし。
でも山小屋の方やほかの宿泊者に心配かけたくない一心で震えを抑えようと必死にコントロールしていました。
理性はあったこと(=重度の低体温症ではない)、ストーブや布団完備の山小屋だったこと、もともとはテント泊を予定していてダウンの上着や寝袋などいろいろ装備していたこともあり、回復できることは分かっていたので、そこは安心でした。
でも、あのとき強風の稜線でビバークしていたら…とか、進行方向が間違っていて小屋に着くまでにもっと時間がかかっていたら…とか、山小屋が営業していなかったら…なんて考えると、首の皮1枚で命が繋がったような気もします。山小屋はちょうどGWの営業の初日だったのです。
そんなこんなで1日目は写真を撮影しませんでした。
悪いことは重なるもので、ブリザードでよろめいたときに左足のアイゼンが外れてしまったようで(必死だったため気づかず)、28日朝は小屋周辺でアイゼンを捜索したために出発が遅くなりました。
雪をいくら掘っても見つからず、鹿島槍ヶ岳は断念し、爺ヶ岳南尾根経由で下山しました(結局捜索範囲の先の稜線で見つかったのですが)。
2日目の28日朝は前日の天気が嘘のように晴天でした。山小屋の温かい布団の中で、さらにテント用に用意していた寝袋にくるまって寝たおかげで、体も回復しました。
とは言え本来はアイゼンの件があり元々予定していた鹿島槍ヶ岳は今回は断念し、赤岩尾根より安全性が高いとアドバイスされた爺ヶ岳冬季ルートの南尾根経由で下山することにしました。
冷池山荘から見た鹿島槍ヶ岳。いつかリベンジしたいです。
爺ヶ岳方面に歩くと、爺ヶ岳の上に虹が見え始めました。
よく見ると太陽を囲むように内側の輪と外側の輪と重なっています。「環水平アーク」と呼ぶようです。
爺ヶ岳南峰からは、前日の吹雪が嘘のように富士山や八ヶ岳、南アルプスまで見渡すことができました。
槍ヶ岳や穂高連峰もきれいに見えています。
剱岳をズームレンズで撮影しました。
こちらは立山連峰。
剱岳と立山連峰を一緒に撮影しました。手前の小屋は種池山荘です。
爺ヶ岳南峰から360°の風景はYoutubeの動画でもご覧いただくことができます。
南尾根経由で無事扇沢に下山し、バスとタクシーで大谷原に置いている車を回収しに行きました。
今回の経験は、山での服装を見直したり、山の天気予報を入念にチェックしたり、自分に見合ったルートなのかしっかり調べて行く行かないを判断するきっかけになりました。
このブログでは、写真を中心にご紹介しておりますが、
ヤマレコでは、コースや通過時刻などの記録も含めた山行日記も公開しております。
⇒鹿島槍ヶ岳から予定変更の爺ヶ岳 ハロと環水平アーク
Instagramでも登山中に一眼レフで撮影した写真を発信しております。
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