マタニティ登山(妊婦の登山)で注意するべきこと

マタニティ登山 八甲田山

マタニティ登山(妊婦の登山)の注意点についてはこちらに移動しました。新しいページでは、体系的な構成と豊富な写真でより見やすく注意点についてご紹介しています。こちらのページでも、当面の間ご覧いただくことができます。


妊娠発覚後にマタニティ登山を続ける理由や気をつけようと思っている点について投稿をしましたが、マタニティ登山を終えた今、改めて登山中級(←私の登山レベルは妊娠前の日記などからご推測下さい)の私がマタニティ登山を振り返えって感じた注意点などをご紹介したいと思います。

おそらくこのページにたどり着く方は大の登山好きの方かと思いますので、登山の技術・体力・経験などがそれなりにあり、山の知識なども備わっている方、そして妊娠中の経過が(過去の妊娠も含め)良好で健康な方という前提で書きます(←雨具や防寒具必要です!のような登山として当たり前のことも、切迫流産や妊娠高血圧症の傾向があるときに運動はやめて!といった妊婦として常識的なこともここでは書きません)。

なおマタニティ登山ウェアについてはこちらの記事を、実際に妊娠期間中に行った山行についてはこちらをご覧ください。

妊婦の登山について注意することは「転倒しない(お腹に衝撃を与えない)」「酸素不足にならない」「リスクに備える」に集約できると思います。妊娠中後期はさらに「体の変化に注意する」必要もあります。以下はそれぞれについて、私が妊婦だった時に体験したこと、感じたことを中心に詳しく注意点を書いていきたいと思います。

転倒しない

自分が転ばないことは大前提

妊娠前はなんてことなかった道でも、妊娠すると「転んではいけない」「守るべきものがある」という心理面での変化から、ちょっとした岩場でも怖さを感じることがあります。私は岩場はそれほど苦手ではなかったために、金峰山岩木山など、部分的に岩場のあるコースでもステップがしっかり取れるコースは特に怖さを感じることなく歩けたのですが(←妊婦でなくてもかなり慎重に下りている方もお見掛けしたため個人差あります)、八ヶ岳・天狗岳の天狗の奥庭は大きな岩がゴロゴロしている区間が長く、足がガクガク震え、来たことを後悔するくらいでした。八甲田山からの下山時、地面より高めに設置されている傾斜のある狭い木道(上毛無岱と下毛無岱の間)が濡れていて滑りやすく、後で詳しく書きますが後続の方の転倒に巻き込まれそうになり怖かったです。岩や狭い高架木道は転倒した時の衝撃も大きいため非常に危険です。

転倒しやすい岩場・鎖場・泥濘・ガレ場や木の根が露出しているえぐられた登山道、濡れた木道などは避ける(特に転倒したときの影響も大きい岩場や狭い高架木道)、できるだけ傾斜が緩やかで広く整備された登山道を選ぶ(特に下山路)、妊娠前に登っていた内容よりも数段階レベルを落とすなどを心がけると良いと思います。また滑りやすい雨の日や雨上がり直後、転倒しやすい強風の稜線は避ける方が良いでしょう。

八ヶ岳 天狗岳 天狗の奥庭
八ヶ岳・天狗岳の天狗の奥庭 下の方に見えるような大きなゴロゴロした岩の道が延々と続き妊娠中は怖かった…

もらい事故のリスクも減らす

滑りやすい場所はいくら自分が気をつけていても他人の転倒の巻き添えになるリスクも高くなります。私の実体験ですが、妊娠中に一度、先ほど書いた八甲田山からの下山時に狭い木道ですぐ後ろを歩いていた人が転倒してあわや追突事故寸前だったことがありました。下山時は後続者の転倒に巻き込まれる可能性があります。後ろからの追突ですと受け身を取ることもできません。ツアー客などで渋滞している時は適宜休憩するなどして調節し密にならない合間を狙って歩く、間隔を詰めてくる人はできるだけ先に行ってもらうように譲る、グループの場合はすぐ後ろを歩く人に十分な間隔を空けて歩いてもらうなどの対応をしてリスクを減らすしかありません。トレイルランナーが多いルートやハイシーズンの観光地化されたルート(初心者が多い)に行くのも考えものかも知れません(こういった登山道と妊婦に向いている道が競合する部分もあるので難しいところですが)。

必要に応じてストックを使う

私は転倒リスクを下げるためと体重増による足の負担を抑えるためにストックを活用していました。精神的なものかもしれませんが、安心感があり下山も楽になったような気がしました。ただ、産後登山を再開してストックなしで登るようになるとやはり両手が空いている方がしっくり来ます。この辺りは登山道の状況や個人の慣れによりけりかも知れません。

マタニティ登山 岩木山
妊娠8ヶ月 岩木山にて

酸素不足にならない

心拍数を上げ過ぎない

酸素が足りなくなるとお腹の中の赤ちゃんに影響が出てしまうかもしれません。心拍数を計測できるスマートウォッチなどを活用し、心拍数が150を超えないように(←妊娠前の登山時の最高心拍数がこの程度だったため)気をつけながら歩きました。誰かと一緒に登る時は妊婦のペースに合わせてもらえる方(夫さんなど?)と登った方が良いと思います。標高差が小さく急登が少ない(短い)コースを選び、荷物はできる範囲で軽量化すると共に(私の場合一眼レフを持って行くのは諦めました)、山に行かない日も体力維持のために有酸素運動を行うなども心がけました。

妊娠前より高い山に登らない

標高も酸素不足の原因になります。高山病へのなりやすさは個人差もありますし、体調によっても変わるので一概にどこまでOKでどこからがNGかは言えないと思いますが、妊娠発覚当時に妊婦は標高2000mくらいまでと書いてある記事も見かけたことがありますので、一般的にはそうなのかもしれません。高山病は2500mくらいから発症する人がいること、妊婦の場合はより慎重にならなくてはいけないことを考えると、理に適っていると言えそうです。

それ以上の標高は自己判断&自己責任でということになりますが、妊娠前から日常的に高山に登っていて、頭痛などの高山病の兆候も全く感じなかった方であればその時の標高が1つの目安になり得るかも知れません。個人の経験を書きますと、妊娠する前の秋ごろから妊娠直前まで、台湾の玉山(3952m)をはじめ3000m峰や2500m以上の山に登っていて体が慣れていたためか、妊娠2ヶ月(←まだ気づいていなかった)の常念岳(2857m)妊娠7ヶ月の乗鞍岳(3026m)で特に問題は起きませんでした(登頂してすぐに下山しました)。真夏の低山は地域によっては熱中症という別のリスクもあるので、どちらのリスクを取るのか難しい問題でもあります。

乗鞍岳山頂
妊娠7ヶ月で登った乗鞍岳 標高より雨風がきつかった(雨の時は滑りやすく危険)

体の変化に注意する

足元が見えづらくなる

お腹がだんだん大きくなってくると、バランスを取るように姿勢が後傾になりがちです。お腹が大きくなる+姿勢が後傾になるということは、足元が見えづらくなるということです。特に下山の時は、急坂になればなるほど足元が見えにくくなり危険度が増します。お腹が大きくなるほど、特に下山においては整備された道や緩斜面を選択するなどコース選択に注意を要します。

体の感覚が変わる

妊娠後期になると、お腹の大きさに感覚がついていかなくなります。日常生活でも、通れると思った場所がお腹が邪魔して通れなかったり、テーブルをよけたつもりがお腹をぶつけてしまったり…感覚が変わることで色々なものが思わぬ障害物になります。木がうっそうと茂っている狭い登山道や片側(両側)が切れ落ちている狭い登山道、岩の間を潜り抜けるような登山道も難しくなります。

お腹がじゃまして足が上がらなくなる

またお腹が大きくなるにつれ、足が高く上がらなくなりますかがむことも難しくなるので、登山靴を履いたり紐を結び直したりするのも、ザックを下におろして中身を取り出すのにもいちいち難儀します(笑)。歩幅は小さくというのは登山の基本ではありますが、妊娠中は否応なくそれを強制実行させられることになります。3点支持で登らなくてはいけないような岩場に行くのは論外ですが、ステップを小刻みに取りにくい急登、段差の大きな階段や大きな石がゴロゴロした岩場倒木など障害物のある道は物理的にも厳しくなります。お腹の大きさに合わせてより整備された道や緩斜面を歩くようにしましょう。

リスクにできるだけ備える

単独行(ソロ)は避ける

1人では万一の場合に対応ができないことがあるため、夫と一緒に登りました。気休めにしかならないかも知れませんが流産の可能性が高いとさされる妊娠初期は生理用ナプキン(夜用)を持ち歩きました(登山でなくても日常的に持ち歩いている方が多いと思いますが)。

妊娠を打ち明けられない人とは一緒に行かない

妊娠前から既に仲間と登山の計画をしていた場合、断るべきか悩むこともあると思います。家族やごく親しい友人でもない限り、安定期に入るまでは秘密にしておきたいという気持ちもあると思います。しかし一番危険なのは、グループの誰にも妊娠の事実を打ち明けずに一緒に登山に行ってしまうこと。万が一の時に適切な対処ができなかったり、かえって迷惑をかけてしまうこともあります。また妊娠中は心拍数が上がり、息も上がりやすくなります。ゆっくり歩く必要があり、同行者にもそれを理解してもらう必要があります。妊娠を打ち明けられないような人との登山は、体調不良などの理由をつけて断るべきです。

一旦ブランクを作ったら産後まで登山は中断

安定期に入るとお腹が急激に大きくなり、妊娠前や妊娠初期と体の感覚が全く変わります。個人差はあるかもしれませんが、私は妊娠4ヶ月頃からお腹が大きくなり胎動を感じるようになり、妊娠5ヶ月目(6月後半)頃から体重が増加し始めました(下のグラフ)。妊娠中も途切れることなく継続的に登山を行っているのなら、感覚の変化に少しずつ順応させることができるかも知れませんが、妊娠期間中にブランクを一度作ってしまったら、バランス感覚や足の可動域、足への負担感が大きく変わってしまうため、産後体が戻るまででは登山は中断する方が良いと思います。お腹が大きくなってからいきなり登山をするというのは非常に危険です

まとめ

妊娠すると、妊娠前に行っていた登山からはレベルを落としたり、標高を低くしたり、標高差を小さくしたり、行程を短くするなどいろいろな制約があるかと思います。でも、制約があるからこそ、より身近な山やそれまで歩いたことのない山の魅力を発見するチャンスと前向きに捉えることができると思います。北アルプスや南アルプスの縦走はできなくなるかもしれませんが、例えば東北や北関東などはなだらかで標高が低い山や湿原があり、山の麓には秘湯の旅館があるなど、南北アルプスとは違った魅力のある場所がたくさんあります。出産後、ベビーキャリア登山をするようになると、お腹で守られていた赤ちゃんを守るものがなくなるためマタニティ登山よりもより慎重になる必要があります。マタニティの時期ならではの登山をぜひ楽しんでください!

マタニティ登山 八甲田山
妊娠8ヶ月 八甲田山にて

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